共有名義の家の3,000万円控除|共有者ごとの居住要件と税額比較
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結論
夫婦や親子で共有しているマイホームを売るとき、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」は共有者ごとに判定し、要件を満たす共有者1人につき最高3,000万円まで使えます。国税庁は「特別控除額は共有者全員で3,000万円ではありません」と案内しています。
ただし、原則として控除を使えるのはその家に住んでいた共有者だけです。家屋の持分を持っていても別の家に住んでいる共有者は、原則として自分の持分についてこの特例を使えません。また、敷地だけを共有していて家屋の持分がない人も、原則として対象外です(親族で同居・生計が同じなどの要件を満たす場合の例外あり)。
さらに、夫婦の一方がもう一方の持分を買い取る「共有者間の売買」は、親子や夫婦など特別の関係がある人への譲渡に当たり、この特例の対象外です。共有を解消する方法を選ぶ前に、税金の差を計算しておくことが大切です。個別の適用可否は税務署・税理士で確認してください。
根拠:国税庁の案内
共有のマイホーム(No.3308)
国税庁タックスアンサーNo.3308「共有のマイホームを売ったとき」(令和8年4月1日現在法令等)は、次の点を示しています。
- 特例を受けられるかどうかは共有者ごとに判定する。
- 譲渡所得は、各共有者の持分に応じて計算する。
- 特別控除額は共有者全員で3,000万円ではなく、適用を受けられる共有者1人につき最高3,000万円。
- 家屋は共有でなく敷地だけが共有の場合、家屋の所有者以外の人は原則として特例を受けられない。
- 確定申告は共有者一人ひとりが行う(根拠法令:租税特別措置法第35条)。
マイホームの特例の基本要件(No.3302)
No.3302「マイホームを売ったときの特例」では、売った資産が現に住んでいる家屋、または住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る以前の住まいであることなどを要件としています。また、親子や夫婦など「特別の関係がある人」に対して売ったものでないことも要件です。売った年の前年・前々年にこの特例を使っていないことなども求められます。
家屋と敷地の所有者が違う場合(No.3311)
No.3311では、家屋の所有者と敷地の所有者が違う場合でも、①家屋と敷地を同時に売る、②両者が親族で生計を一にしている、③敷地の所有者も家屋の所有者と一緒に住んでいる、の3つを満たせば、敷地の所有者も特例を受けられるとしています。この場合の控除額は家屋の所有者と敷地の所有者を合わせて3,000万円までで、まず家屋の所有者が控除し、残りを敷地の所有者が使います。
家屋が共有で、敷地は1人の所有の場合(質疑応答事例)
国税庁の質疑応答事例「共有で所有している家屋とその敷地を譲渡した場合」では、甲の土地の上に甲と乙が共有する家屋があり、甲だけが住んでいる例について、甲は家屋の持分(2分の1)と敷地の全部について特例を適用して差し支えないと回答しています。住んでいない乙の持分は、甲の判定とは別に考えることになります。
計算例:1億円で売る家を夫婦で持っていた場合
前提(説明用の仮定):売却価格1億円、取得費3,000万円(建物の減価償却後の額を含む想定)、譲渡費用339万6,000円(仲介手数料の上限336万6,000円+売主負担の印紙税3万円)、所有期間5年超の長期譲渡。10年超所有の軽減税率は使わない前提で、所得税15%、復興特別所得税(所得税額の2.1%)、住民税5%で単純計算します。
譲渡所得は、1億円−3,000万円−339万6,000円=6,660万4,000円です。
| ケース | 特別控除 | 課税譲渡所得 | 所得税等+住民税(合計) |
|---|---|---|---|
| A:夫の単独名義(夫が居住) | 夫3,000万円 | 3,660万4,000円 | 約743万6,100円 |
| B:夫婦2分の1ずつ、2人とも居住 | 夫3,000万円+妻3,000万円 | 各330万2,000円(計660万4,000円) | 約134万1,600円 |
| C:夫婦2分の1ずつ、妻は居住要件を満たさない | 夫3,000万円のみ | 夫330万2,000円、妻3,330万2,000円 | 約743万6,100円 |
内訳(ケースB、1人分):所得税495,300円、復興特別所得税10,401円、住民税165,100円で約670,800円。2人で約1,341,600円です。
ケースCでは、妻の持分の譲渡所得3,330万2,000円に控除がなく、妻だけで所得税4,995,300円、復興特別所得税104,901円、住民税1,665,100円(計約676万5,300円)がかかります。結果として、単独名義のケースAと同じ合計額になります。共有名義なら必ず有利になるわけではなく、共有者それぞれが住んでいたかどうかで結果が大きく変わります。
実際には10年超所有の軽減税率、取得費の計算(建物の減価償却)、端数処理などで金額は変わります。手取りの全体像は、提示価格・残債・費用を入れて2案の手取り比較で確認できます。
共有を解消する方法ごとの注意
| 方法 | 3,000万円控除との関係 | 確認すること |
|---|---|---|
| 共有者全員で第三者に一括売却 | 住んでいた共有者がそれぞれ判定 | 全員の同意、持分割合、各自の確定申告 |
| 夫婦間・親子間で持分を売買 | 特別の関係がある人への譲渡のため対象外(No.3302) | 譲渡所得の課税、贈与とみなされない価格か |
| 自分の持分だけを第三者(買取業者など)に売る | 本記事では国税庁資料で確認できていない | 税務署に適用可否を確認。価格は全体売却の按分額とは別に決まる |
| 離婚に伴う財産分与で持分を移す | 財産分与の扱いは別途確認が必要 | 税理士・弁護士に確認 |
持分だけを売る場合の民法上のルール(変更・管理の決め方、所在等不明共有者の制度)は共有持分の売却と民法のルールで整理しています。買取業者に売るか、仲介で全体を売るかの違いは買取と仲介の違いで比べられます。
売る前の手順
- 登記で持分を確認する:家屋と敷地のそれぞれについて、誰がどの割合で持っているかを登記事項証明書で確認します。相続で取得して未登記の部分がある場合は、先に相続登記が必要です(相続登記が未了の不動産を売る)。
- 共有者ごとの居住状況を整理する:住民票の住所、実際に住んでいた期間、住まなくなった日を共有者ごとに書き出します。住まなくなった共有者は「3年を経過する日の属する年の12月31日」までに売る必要があります。
- 共有者ごとに譲渡所得を試算する:売却価格・取得費・譲渡費用を持分で按分し、控除を使える人と使えない人を分けて計算します。
- 解消の方法を比べる:第三者への一括売却、持分売却、共有者間の売買で、税額と手取りがどう変わるかを比べます。
- 翌年に各自で確定申告:特例を使う共有者は、それぞれ確定申告をします。
注意すること
- 住宅ローン控除との関係:新しい住まいで住宅ローン控除を使う場合、3,000万円控除と同時に使えない期間の制限があります。No.3302の関連ページで確認してください。
- 持分と負担の不一致:登記上の持分と、実際に購入資金やローンを負担した割合が違う場合、贈与税など別の問題が生じることがあります。
- 相続した家:相続した空き家を売る場合は、別の特例(被相続人の居住用財産の特例)の要件で判定します。相続人が3人以上の場合の控除額の上限などが異なります。
- 断定しないこと:本記事は国税庁の公開情報をもとにした一般的な整理です。適用の可否は事実関係で変わるため、税務署・税理士で確認してください。
よくある質問
Q1. 夫婦共有の家なら、合計6,000万円まで控除できますか?
共有者2人とも要件を満たせば、それぞれ最高3,000万円まで控除できます。国税庁は「共有者全員で3,000万円ではない」としています。ただし控除できるのは各自の持分の譲渡所得の範囲までです。
Q2. 単身赴任で別の家に住んでいた共有者も対象になりますか?
単身赴任などの事情がある場合の扱いは、個別の事情で判断されます。本記事では国税庁の個別の案内を確認できていないため、税務署に確認してください。
Q3. 妻の持分を夫が買い取る場合、妻は3,000万円控除を使えますか?
No.3302では、親子や夫婦など特別の関係がある人に売った場合は特例の対象外とされています。夫婦間の売買では使えない前提で試算してください。
Q4. 敷地だけ親の名義でも控除できますか?
No.3311では、家屋と敷地を同時に売る、親族で生計を一にしている、敷地の所有者も一緒に住んでいる、の3つを満たせば敷地の所有者も対象になります。ただし控除額は家屋の所有者と合わせて3,000万円までです。
Q5. 確定申告は代表者1人でよいですか?
国税庁は、確定申告書は共有者一人ひとりが提出すると案内しています。
出典(確認日:2026年10月27日)
- 国税庁 タックスアンサー No.3308 共有のマイホームを売ったとき(令和8年4月1日現在法令等) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3308.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3302 マイホームを売ったときの特例(令和8年4月1日現在法令等) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3311 家屋と敷地の所有者が異なるとき(令和8年4月1日現在法令等) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3311.htm
- 国税庁 質疑応答事例「共有で所有している家屋とその敷地を譲渡した場合」 https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/18/07.htm
現在の住所だけで対象外と決めない
以前の居住用家屋も、住まなくなってからの譲渡期限などを満たせば対象になり得ます。単身赴任などの事情、家屋と敷地の所有関係を含め、共有者ごとに国税庁No.3302・3308・3311で判定します。「今は別居」だけを理由に控除不可とする例ではありません。表のケースCは妻が居住要件を満たさず、その他の特例も使わない仮定です。
費用と条件を分けて、ひとつずつ確かめよう。